Claude Codeの仕組み講座(講師のためのエンジニア水準)

区分2 コンテキストとトークン★★★

No.06 要約(compact)と、残す工夫

机(コンテキスト)が満杯に近づいた時に何が起きるか、そして何が残って何が抜けるのかを扱います。「長く話したら指示を忘れた」という受講生の悩みの正体がここです。講師としてはしっかり読む単元です。
目次
  1. 第0章 前提知識
  2. 第1章 自動の要約で何が起きるか
  3. 第2章 何が残り、何が抜けるか
  4. 第3章 調べ物は別の机に出す
  5. 確認問題

第0章 前提知識

① 要約(compact) :古い会話を短い「まとめ」に置き換えること

No.05 で、机の広さには上限があると学びました。 満杯に近づくと、これまでの会話をAI自身に短くまとめさせ、元の長い会話をそのまとめに置き換えます。 これを要約(英語で compact)と呼びます。

たとえ話にします。 机がいっぱいになったので、広げていた書類を「議事録1枚」にまとめて、元の書類は片付けるイメージです。 議事録に書いていない細かい点は、もう机の上にありません。

② 似た操作の違い

名前が似ていて混ざりやすいので、先に分けます。

操作 何が起きる 机の上の会話は
自動の要約 満杯に近づくと自動で古い内容を整理する 要約に置き換わる
/compact 自分の好きな時に要約する。残したい点を指定できる 要約に置き換わる
/clear 会話を空にして新しく始める 空になる(前の会話は /resume=過去の会話の一覧から選んで呼び戻す操作、で戻せる)

要約は「縮めて続ける」、/clear は「捨てて新しく始める」です。

第1章 自動の要約で何が起きるか

① 片付けは2段階 必ず覚える

公式の説明では、机が満杯に近づくと、次の順に片付きます。

  1. まず古い道具の結果(読んだファイルの中身や出力)を消す
  2. それでも足りなければ、会話全体を要約する

先に消えるのは道具の結果です。 ここは机を一番埋めている部分なので、効率が良いからです(No.05 の第1章②)。

公式は、要約後も「あなたの依頼と、大事なコードの断片は残る。ただし会話の序盤に出した細かい指示は失われることがある」と書いています。

② 要約が働く時機 さらっと

自動の要約が動く点は、モデルで変わります。 公式では、100万トークンの窓を標準で持つモデルは、窓が満杯になる少し前の約967,000トークン(窓の約97%)で動くのが既定です。 手前で動く理由は、公式には書かれていません。 窓が200,000トークンの設定では、その窓の限界で動きます。

動き始める点は、自分で下げることもできます。 /autocompact 500k と打つと、500,000トークンで動くようになります(/autocompact は、自動の要約が動き始める点を決めるコマンドです)。

数字は2026年10月時点の公式です。 講義では「満杯の少し手前で、自動で動く」と伝えれば足ります。

③ 無限には続かない さらっと

1つのファイルや出力があまりに大きく、要約しても直後にまた満杯になる場合、Claude Code は数回試したあと止まってエラーを出します。 繰り返し続けて無駄に使うのを避ける安全策です。

○ よくある勘違い:「長く話すほど、私のことを覚えてくれる」→ ×。長くなるほど、序盤の細かい指示は要約で薄れます
○ 関係する単元:No.05 コンテキストウィンドウの中身

第2章 何が残り、何が抜けるか

① 「ファイルから読み直される物」は残る 必ず覚える

要約の後、次の物はもう一度読み込み直されます。

物 要約のあと
システムの指示、出力スタイル そのまま効く
作業場の一番上にある CLAUDE.md(公式:プロジェクトルートの CLAUDE.md) パソコンの中のファイルから読み直される
記憶(MEMORY.md) ファイルから読み直される
呼び出したスキルの本文 読み直される(1つ5,000トークン、合計25,000トークンまで。古い物から外れる)
直近に読んだ・編集したファイル 最大5つが読み直される(5,000トークンを超える物は、ファイルの場所だけで中身は戻らない)
バックグラウンドで動かしていたコマンド 動き続ける

共通点は、元がファイルとして残っていることです。 だから机を片付けても、読み直せます。

② 「会話の中にしかなかった物」は抜ける 必ず覚える

反対に、会話の中でしか存在しなかった物は、要約に含まれるかどうかだけで決まります。

特に気をつけたいのは、口で言った禁止事項です。 「push しないで」と会話で伝えただけだと、要約で抜けた時に守られなくなります。 push は、手元で直した内容を共有先のサーバーへ送る操作です。

自動モード(別のAIが操作をしてよいか判定するモード。No.14)も、同じです。 公式によると、判定は会話の発言を読み直して行うので、その発言が要約で消えると効かなくなります。 絶対に守らせたい禁止事項は、許可ルールの deny(No.13)に書きます。 deny は、実行そのものを本体が止める設定です。

③ 残す工夫は4つ 必ず覚える

  1. CLAUDE.md に書く:ファイルなので要約を越えて残ります。毎回守ってほしい決まりの置き場です
  2. /compact で残したい点を指定する:たとえば /compact 請求書スキルの修正点を残して。自動の要約が「大事そうな所」を推測するのに対し、あなたが選べます
  3. CLAUDE.md に「要約する時の指示」を書く:公式の説明では、CLAUDE.md に「Compact instructions」という見出しを置き、残したい内容を書いておけます。日本語の CLAUDE.md なら、見出しは公式の例のとおり英語にして、中身を日本語で書きます(日本語の見出しで効くかは、公式に書かれていません)
  4. 別の話題は /clear で新しく始める:机を空にして始めれば、古い話が混ざりません。戻りたくなった時のために、先に /rename(会話に名前を付ける操作)で名前を付けておけば、/resume の一覧から探せます

3つ目の書き方の例です。

# Compact instructions

要約する時は、テスト結果とコードの変更点を優先して残してください。

第3章 調べ物は別の机に出す

① サブエージェント :別の机で調べて、結論だけ持ち帰る助手 必ず覚える

サブエージェントは、Claude が呼び出す「別の作業者」です(詳しくは No.12)。 専用の机(コンテキスト)を持っていて、そこで大量のファイルを読んだり出力を処理したりします。 終わると、まとめた報告だけがあなたの会話に戻ります。

事務所でいえば、「過去3年分の契約書を全部確認して、問題点を報告して」と、別室の担当者に頼むことです。 あなたの机には、担当者の報告書1枚だけ置かれます。大量に読むと机が埋まる作業を、別の机に出せるわけです。

頼み方は一言で足ります。 「サブエージェントを使って、〜を調べて」と添えます。

② 外に出しても、タダではない さらっと

サブエージェントの作業も、同じ利用量に数えられます(No.07)。 机は軽くなりますが、使う量が減るわけではありません。

○ 受講生によく聞かれる質問:「要約されると、約束が消えるのはなぜ?」
→ 要約は「会話を短い文章に置き換える」処理です。短くする以上、書かれなかった細かい点は落ちます。仕組みとして避けるには、会話ではなくファイル(CLAUDE.md や deny)に置く、と答えます
○ 受講生によく聞かれる質問:「/compact と /clear はどう使い分ける?」
→ 同じ作業を続けるなら /compact(縮めて続ける)。別の仕事に移るなら /clear(空で始める)。同じ作業の途中で /clear すると、続きの文脈を失います
○ 関係する単元:No.08 CLAUDE.md と記憶、No.12 サブエージェント、No.13 許可ルール

要約は縮めて続ける。ファイルにある物は残り、会話の中だけの物は抜ける。絶対に守らせたいことはCLAUDE.mdか deny に。調べ物はサブエージェントへ。

確認問題

問1 会話の最初に「このフォルダは絶対に消さないで」と口で伝えました。何時間も作業して自動の要約が何度か起きたあと、その約束が守られなくなりました。仕組みの説明として正しいのは?

問2 要約のあとも、ほぼ確実に効き続けるのはどれですか?

問3 大量のログを調べさせたいが、メインの会話を重くしたくありません。適切なのは?

問4 作業が一区切りして、全く別の仕事に移ります。前の仕事の話を混ぜたくありません。最も適切なのは?

出典:Claude Code 公式ドキュメント「How Claude Code works」(https://code.claude.com/docs/en/how-claude-code-works)「Explore the context window」(https://code.claude.com/docs/en/context-window)「Manage costs effectively」(https://code.claude.com/docs/en/costs)「Choose a permission mode」(https://code.claude.com/docs/en/permission-modes)「Model configuration」(https://code.claude.com/docs/en/model-config)。2026年10月13日に確認